ぷくぷくシールはなぜ循環し、ディズニーはなぜ重くなったのか ── 世代ブリッジマーケティングという視点

目次

ぷくぷくシール再ブームは、なぜ「今」起きているのか

ぷくぷくシール

近年、小学生を中心に「ぷくぷくシール」が再びブームになっている。

ボンボンドロップシール(通称ボンドロ)をきっかけに、立体的で触感のあるシールが人気化し、入荷即完売・行列といった状況も報じられている。

重要なのは、このブームが子どもだけで完結していない点だ。

報道では、

・親世代が「自分の子どもの頃を思い出す」として一緒に購入している
・親子で集め、話題を共有している

といった様子が繰り返し紹介されている。

参考:

これは単なる流行ではなく、世代をまたいで価値が再起動している現象と見ることができる。


お菓子帳ブームが示す「循環が止まらない設計」

お菓子帳

ぷくぷくシールの入手困難を背景に、もう一つの現象が生まれている。

それが「お菓子帳」だ。

シール帳の代わりに、市販のお菓子を帳面に並べ、見せ合ったり交換したりする遊びである。

報道では、「シールが手に入らないから、お菓子で代用した」という子どもたちの声が紹介されている。

参考:FNNプライムオンライン:“ボンドロ”シール帳の次は“お菓子帳”が人気?ページにぎっしりとお菓子が「1ページはチョコ系で」

ここにはマーケティング的に見て、明確な特徴がある。

・価格が低く、親が買いやすい
・消費される前提なので更新が止まらない
・「おやつ」という正当性があり、心理的ハードルが低い

つまり、お菓子帳は最初から“循環する前提”で成立している遊びだ。


共通点は「子どもの頃の憧れを、親になって回収する」構造

ぷくぷくシールとお菓子帳に共通するのは、

親世代の未回収の憧れが行動を後押ししている点である。

・平成期に子どもだった
・当時は自由に買えなかった
・今は親になり、意思決定権と可処分所得を持っている

その結果、

「自分が楽しめなかったものを、今度は子どもと一緒に楽しむ」

という行動が自然に生まれている。

これは単なるノスタルジー消費ではない。

親と子が同時に顧客になる構造が成立している。


東京ディズニーランドは、この循環を回して成長してきた

東京ディズニーランドも、長らく同じ構造の上で成長してきた。

昭和から平成にかけて、ディズニーは

「子どもにとっての特別な憧れ」であり、

家族旅行のハイライトだった。

やがてその子どもたちが親になり、

自分の子どもを連れて行く側になったことで、

リピートが積み上がり、業績成長につながった。

参考:株式会社オリエンタルランド:入園者数


ディズニー値上げのたびに「行かない」「行けない」が繰り返されてきた

この循環が揺らぎ始めている。

重要なのは、この循環が最近になって突然揺らぎ始めたわけではないという点だ。

2015年:「もう高くて行けない」が見出しになる

2015年のチケット値上げ時、

J-CASTニュースはネット上の反応として、

・「もう高くて行けない」
・「それでも行っちゃう」

という両論が噴出していることを報じている。

参考:J-CASTニュース(2015年):TDL値上げで「大人6900円」「駐車代休日3000円」 「もう高くて行けない」「それでも行っちゃう」ファン揺れる

2016年:3年連続値上げで反発が拡大

2016年にも再度値上げが発表され、

「いくらなんでもやりすぎ」「これ以上は行けない」といった声が、再び記事中で引用されている。

参考:J-CASTニュース(2016年):「貧乏人は行けない」ディズニー入園料7400円にファン唖然 3年連続、超強気「価格設定」はいつまで続くのか

2023年:「1万円超え」で“価格と価値”が論点に

2023年、チケット価格が1万円を超えた際には、

ITmediaが「批判の声が出ている」と明確に報じている。

参考:ITmedia ビジネスオンライン:「ディズニーのチケット、1万円は高すぎる」という発想が日本を貧しくさせたワケ

ここで論点は、

「行くか/行かないか」から、

「その価格は、次の世代の原体験として成立するか」へと移っている。


業績が好調でも、循環は静かに細くなる

値上げがあっても、

ディズニーの売上・利益は好調に見える。

その理由は明確で、

来園者数ではなく、1人当たり単価を引き上げているからだ。
(来園者数は伸び悩み、コロナ前の水準を回復できていない)

この戦略自体は短期的には合理的であり、否定されるべきものではない。

しかし、問題は別のところにある。

・親が「気軽に連れて行けない」
・頻度が下がる
・子どもの原体験になりにくくなる

循環が細くなっても、数字にはすぐに表れない。

だが一度切れると、取り戻すには長い時間がかかる。

参考:


世代ブリッジマーケティングという視点

ここまでの事例から導けるのが、

世代ブリッジマーケティングという考え方だ。

世代ブリッジマーケティングとは、

ある世代の憧れや原体験を、

その世代が親・意思決定者になったタイミングで、

次の世代と一緒に再体験できるよう設計すること。

ぷくぷくシールやお菓子帳は、

・価格
・頻度
・心理的ハードル

のすべてにおいて、この条件を満たしている。


チャンスは「循環の兆し」を見抜けるかどうかにある

大きな市場は、最初から大きな兆しとして現れない。

・子ども向けの小さな流行
・一部の親の「懐かしい」という反応
・ささやかな親子体験

そこに循環の芽がある。

マーケティングの本質は、

今の顧客を深掘ることだけではない。

10年後、その顧客が親になったとき、

何を子どもに体験させたいと思うか。

その問いに先回りできる企業にこそ、

長期的な成長のチャンスがある。

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