「BtoBマーケティングの仕組みを作りたいが、専門用語が多くて混乱している」
「営業とマーケティングの連携がうまくいかず、機会損失が起きている気がする」
新しくBtoBマーケティングや営業企画を任された皆様は、こうした課題に直面していないでしょうか。
本記事は、現代BtoBビジネスの勝ちパターンである「THE MODEL(ザ・モデル)」について、その基礎から実務レベルの運用までを網羅した完全ガイドです。
【前編】となる今回は、THE MODELの全体構造、導入のメリット、そしてビジネスの起点となる「リード(見込客)」をいかに集め、分類し、管理するかという戦略論を徹底解説します。
BtoBの事業を運営する企業の企画・推進担当の方が、読み終えた後に「自社のマーケティング・営業プロセスをどう再設計すべきか」を明確にします。
1. THE MODELとは?組織の生産性を最大化する「3つの要素」
THE MODELの定義
THE MODEL(ザ・モデル)とは、営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4部門に分業し、各部門の情報を可視化・数値化することで、組織全体の生産性を最大化する営業プロセスモデルです。
単に「部署を分けること」が目的ではありません。THE MODELの本質は、以下の3つの要素が揃って初めて機能します。
① 分業による「専門性」の最大化
プロセスごとに部門を切り分けます。「見込客を集めるプロ」「電話で関係を築くプロ」「商談をまとめるプロ」「顧客を成功させるプロ」と、「使う筋肉」が違う業務を分けることで、各メンバーのスキル習熟速度を上げ、専門性を高めます。

② 全工程の活動の「記録・可視化」
「頑張っています」「多分いけます」といった感覚値を排除します。すべての顧客接点とアクションをSFA(営業支援システム)やMA(マーケティングオートメーション)に記録し、ブラックボックス化を防ぎます。
③ KPIの徹底的な追跡と「連鎖」
各部門がバラバラの目標を追うのではなく、前工程の成果が後工程のスタート(母数)になる「数値の連鎖」を作ります。これにより、ボトルネックがどこにあるかが一目瞭然になります。

【重要】THE MODELは「業務分解表」ではない
ここで多くの企業が陥る罠があります。それは、THE MODELを単なる「業務を縦割りにした組織図」だと勘違いしてしまうことです。
- 「マーケはリードを取るだけ」
- 「営業は商談するだけ」
このように業務を分断してしまうと、部門と部門の間に「責任の空白地帯」が生まれます。「マーケが取ったリードを営業が放置する」「営業が取った受注をCSが把握していない」といった「ポテンヒット(ボール落とし)」が頻発するのです。
THE MODELの本質は、分業することではなく、「責任のバトンパスを設計すること」にあります。次の走者が走りやすいように、どのような状態でバトン(顧客情報)を渡すのか。その「接続部分」の設計こそが、リーダーに求められる最大の仕事です。
2. 「従来型」vs「分業型」:なぜ営業プロセスを変える必要があるのか

なぜ今、多くの企業がTHE MODEL型の分業プロセスを導入するのでしょうか。それは、従来の「属人型」営業スタイルが限界を迎えているからです。
従来型(属人型)営業プロセスの限界

かつては、一人の営業担当者が「集客(テレアポ)→商談→受注→納品後のフォロー」まで全てを担うスタイルが一般的でした。
- 課題1:スーパー営業マンへの依存
全てのスキルを高いレベルで持っている人材は稀です。採用難易度が高く、退職時のダメージも甚大です。 - 課題2:活動量の物理的限界
既存顧客のフォロー(農耕型業務)に追われると新規開拓(狩猟型業務)が止まり、新規開拓に集中すると既存顧客が離れるというジレンマが発生します。講師はこれを「使う筋肉とリズムが違う」と表現し、一人で兼務することの構造的な無理を指摘しています。 - 課題3:プロセスのブラックボックス化
「なぜ売れたのか(または売れないのか)」が個人の頭の中にしかなく、組織としてのナレッジが蓄積されません。
分業型(THE MODEL)の導入メリット
THE MODEL型に移行することで、これらの課題を構造的に解決できます。
- メリット1:再現性の確保
各工程をシンプルにすることで、新人でも早期に戦力化が可能になります。「スーパーマン」がいなくても組織が回るようになります。 - メリット2:ボトルネックの特定
「アポは取れているが商談化しない(インサイドセールスの課題)」「商談はしているが受注しない(フィールドセールスの課題)」など、どこを改善すれば売上が伸びるかが明確になります。 - メリット3:顧客体験(UX)の向上
「売り込み」ではなく、そのフェーズに最適な専門スタッフ(例えば導入後はカスタマーサクセス)が対応することで、顧客満足度が向上します。
(※導入しない場合のデメリット)
逆に、この変革を行わない場合、市場の変化(デジタル化)に対応できず、「営業マンを採用し続けないと売上が維持できない」という労働集約型の泥沼から抜け出せなくなるリスクがあります。
3. 数値の「連鎖」を可視化する:4つのプロセスとKPI

THE MODELの最大の特徴は、以下のように数字がバトンのように渡されていく「ファネル(漏斗)構造」にあります。
【図解】数値連鎖の方程式
- マーケティング(Marketing)
- ミッション:見込客の獲得
- 計算式:
来訪者数 × 獲得率 = [見込客数(リード)]
- インサイドセールス(Inside Sales)
- ミッション:見込客の育成と見極め
- 計算式:
[見込客数] × 案件化率 = [案件数(商談)]
- フィールドセールス(Field Sales)
- ミッション:提案と受注
- 計算式:
[案件数] × 受注率 = [受注数]
- カスタマーサクセス(Customer Success)
- ミッション:継続と拡大
- 計算式:
[受注数] × 更新率 = [継続数(LTV)]
重要なポイント:
「マーケティングのゴール(獲得数)」は、そのまま「インサイドセールスの母数」になります。つまり、マーケティングが「質」の悪いリードを大量に流せば、後工程のインサイドセールスの「案件化率」が下がり、組織全体が疲弊します。
この「数字の連鎖」を全部門が理解し、全体最適を目指すことがTHE MODEL成功の要諦です。
4. すべての起点「リード(Lead)」の基礎知識と2つの分類
ここからは、最初のプロセスである「マーケティング」に焦点を当てます。まずは主役である「リード」について、2つの視点(意欲とフェーズ)から正しく理解しましょう。
リードの定義
リードとは、自社サービスに関心を持ち、「個人情報(企業名、氏名、連絡先など)」を提供してくれた見込客のことです。Webサイトへの匿名アクセスは、まだリードではありません。

① リードの種類|購買意欲による分類(Hot/Cold)

まず理解すべきは、顧客の「温度感(心理状態)」による分類です。集まったリードは全員が「今すぐ欲しい」わけではありません。
| 分類 | 状態(熱量) | 顧客心理 | 必要なアクション |
|---|---|---|---|
| Hot Lead (ホットリード) | 高い | 「具体的検討に入りたい」「見積が欲しい」 | 即座のアプローチ 競合に取られる前にFS/ISが接触する |
| Warm Lead (ウォームリード) | 中程度 | 「興味はあるが予算化は未定」「情報収集中」 | 育成(ナーチャリング) セミナーや事例紹介で課題を顕在化させる |
| Cold Lead (コールドリード) | 低い | 「とりあえず名刺交換した」「課題認識薄い」 | 定期接触 メルマガ等で接点を維持し、忘却を防ぐ |
BtoBマーケティングの難しさは、獲得できるリードの大半(7〜9割)がCold または Warmである点です。これらをいかに捨てずにHotへ育てるかが勝負となります。
② リードの種類|フェーズによる分類(MQL/SQL)

次に、組織としてリードを管理するための「工程(ステータス)」による分類です。THE MODELでは、リードの状態を以下の4段階で定義し、明確に区別します。
- Inquiry(インクワイアリー:引き合い)
- 定義: 個人情報を獲得したが、まだマーケティング部門が精査していない状態(玉石混交)。
- MQL(Marketing Qualified Lead:有望リード)
- 定義: マーケティング部門が精査し、「自社のターゲットであり、フォローする価値がある」と認定したリード。ここで初めてインサイドセールスに引き渡されます。
- SQL(Sales Qualified Lead:引き渡しリード)
- 定義: インサイドセールスや営業がアプローチし、「案件化(商談化)の可能性がある」と認めたリード。
- Close(受注・失注)
- 定義: 商談の結果、受注した、もしくは失注した状態。
MQL / SQL を固定した組織の末路
ここで注意すべきは、「MQLやSQLの定義を固定しすぎると組織が死ぬ」ということです。
「MQLの定義はこれだ」と一度決めた後、金科玉条のごとく守り続けていませんか?
- 営業が忙しい時: 厳しめのMQL定義(Hot Leadのみ)にしないと、営業がパンクして対応品質が落ちます。
- 営業が暇な時: 緩めのMQL定義(Warm Lead含む)にして母数を増やさないと、営業の手が空いてしまいます。
定義は固定するものではなく、組織のリソース状況や目標達成度合いに合わせて「可変させるもの(調整弁)」です。数字がズレているのに定義を守り続け、「マーケは定義通りのリードを渡しました(だから我々の責任ではありません)」と言い始めた瞬間、組織の崩壊が始まります。
「定義を壊す勇気」を持ち、部門間で柔軟にチューニングし続けることこそが、生々しい運用のリアルです。
5. リード管理の3つのステップ(デマンドジェネレーション)
リードを「集めて」から「営業に渡す」までのプロセスは、大きく3つのステップに分かれます。この一連の流れを「デマンドジェネレーション(案件創出)」と呼びます。

Step 1:リードジェネレーション(Lead Generation)
【定義】見込客を獲得する活動
自社の製品やサービスに興味を持つ可能性のあるターゲットに対し、接点を持ち、実名情報(会社名、氏名、メールアドレスなど)を獲得するフェーズです。
- 目的: 将来の売上の「母数」を作ること。
- 現場のポイント: やみくもに名刺を集めるのではなく、「自社のターゲット顧客(ペルソナ)」に近いリードを狙って集めることが、後工程の無駄を省く鍵となります。
2つの集客手法(メリット・デメリット)
最初の入り口である「リードジェネレーション」には、大きく分けて「プル型(インバウンド)」と「プッシュ型(アウトバウンド)」の2つのアプローチがあります。
(1) プル型(インバウンドマーケティング)
顧客に「見つけてもらう」手法です。
- 主な手法: SEO記事、ホワイトペーパー、Web広告、SNS運用
- メリット: 顧客側から探して来ているため、比較的関心度(質)が高い。コンテンツが資産になる。
- デメリット: 効果が出るまで時間がかかる(中長期戦)。
(2) プッシュ型(アウトバウンドマーケティング)
企業側から「攻め込む」手法です。
- 主な手法: 展示会、DM送付、コールドコール(テレアポ)
- メリット: 短期間で大量のリード数を獲得できる。決裁者に直接アプローチできる。
- デメリット: コストが高い。顧客のタイミングを無視するため、質(確度)は低くなりやすい。

Step 2:リードナーチャリング(Lead Nurturing)
【定義】見込客を育成する活動
獲得したリードに対し、継続的に有益な情報を提供することで信頼関係を構築し、購買意欲を高めていくフェーズです。
- 目的:
- 検討度の引き上げ: 「まだ情報収集中」の層に、課題解決の必要性を気付かせ、検討フェーズへ移行させる。
- 機会損失の防止: すぐに商談にならない顧客とも接点を維持し、検討タイミングが来た時に「第一想起(最初に思い出してもらう)」を獲得する。
- 主な手法: メールマガジン、ステップメール、導入事例集の送付、ウェビナー招待。
- 現場のポイント: 一方的な「売り込み」は嫌われます。顧客にとって役立つ情報(ノウハウや事例)を提供し、「良き相談相手」としてのポジションを確立することが重要です。
Step 3:リードクオリフィケーション(Lead Qualification)

【定義】見込客を選別する活動
育成されたリードの中から、「今、営業がアプローチすべき確度の高いリード(ホットリード)」を見極め、選別するフェーズです。
- 目的: フィールドセールスが対応すべき案件を絞り込み、商談の受注率と営業効率を高めること。
- 主な手法:
- スコアリング: 「課長職以上なら+5点」「料金ページを見たら+10点」など、属性や行動を点数化し、一定点数を超えたら通知する。
- インサイドセールスによるヒアリング: 架電やメールでBANT条件(予算・決裁権・ニーズ・時期)を確認する。
- 現場のポイント: 選別基準(クオリフィケーション条件)を厳しくしすぎると営業へのパス数が減り、緩くしすぎると営業が疲弊します。この基準は固定せず、営業側のリソース状況に合わせて柔軟に調整する(チューニングする)ことが運用成功の秘訣です。
6. 現場の壁:「営業 vs マーケティング」の対立を防ぐには?

THE MODEL導入時によく起こるのが、部門間の対立です。
- 営業の言い分: 「マーケから来るリードの質が悪すぎて、電話しても繋がらない!」
- マーケの言い分: 「せっかくリードを渡しているのに、営業が全然フォローしてくれない!」
この原因は、「ホットリード(有望見込客)」の定義ズレにあります。
- マーケ視点:「資料ダウンロードしたからホットだ!」
- 営業視点:「予算も決裁権もない担当者はホットじゃない!」
解決策:SLA(Service Level Agreement)の締結
これを防ぐためには、両部門の責任者が集まり、「定義」を合意形成する必要があります。
- どういう属性(役職・業種・規模)か?
- どういう行動(料金ページ閲覧・セミナー参加・資料請求)をした人か?
これらを明確にし、「この条件を満たしたリード(MQL)なら、営業は必ず24時間以内にアプローチする」といった約束事(SLA)を文書化してください。
7. リード獲得の効率化には限界がある
ここまでリード獲得・育成・選別のプロセスを解説してきましたが、最後に一つ重要な真実をお伝えします。それは、「新規リード獲得には必ず限界が来る」ということです。
効率化の頭打ち

施策を継続実施していると、その市場におけるターゲット層に一通りリーチしてしまい、新規リードの獲得効率(CPA)は必ず悪化します。また、どんなに商談化率や受注率などのプロセス効率を上げても、母数自体が枯渇すれば売上は止まります。
「リサイクル」によるリード数の補填

だからこそ重要になるのが、「リサイクル」という概念です。
- 商談につながったが失注した案件(ロスト商談)
- 商談に至らなかったが興味は持っていたリード
- 未フォローの既存顧客(アップセル対象)
これらを「失敗」として捨てるのではなく、再度ナーチャリングのプロセスに戻し、中長期的にフォローし直す。この「敗者復活戦」の仕組みを設計できるかどうかが、組織の持続的な成長を左右します。
8. まとめ(前編)
【前編】では、THE MODELの骨組みとなる概念と、その入り口であるリード戦略について解説しました。
- THE MODELの本質は、単なる分業ではなく、可視化と連携による生産性の最大化にある。
- リードの分類は、固定せずに「状況に合わせて可変させる調整弁」として運用する。
- デマンドジェネレーション(獲得・育成・選別)のプロセスを回し、質の高いリードを供給し続けることがマーケティングの責務である。
- しかし、集めるだけでは限界が来るため、「リサイクル(循環)」による補填の仕組みが不可欠である。
リードを集めて育て、選別し、循環させる。この土台があって初めて、営業活動は機能します。
そのバトンを受け取る「インサイドセールス」の具体的な動き方、商談を管理する「フィールドセールス」、そして契約後の「カスタマーサクセス」へと続く後半のプロセスが、THE MODELの真骨頂です。
続く【後編】では、これらの実務プロセスと、現場で必ず直面する「KPIによる組織の機能不全」や「ITツールの正しい位置づけ」などの運用ノウハウについて徹底解説します。
(【後編】へ続く:インサイドセールス・FS・CSの実践ガイド)
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