はじめに:なぜ、事業開発に「ペルソナ」が必要不可欠なのか?
「新規事業開発を任されたが、顧客の顔が具体的に見えず、どこから手をつければいいかわからない…」
「ターゲット顧客は設定したが、チーム内で認識がバラバラで、議論がかみ合わない…」
新たに事業開発を担当することになったあなたは、このような壁に直面しているのではないでしょうか。
これまでの記事で、新規事業開発を成功に導く5つのステップと、その初期段階で極めて重要な「セグメンテーション」と「ターゲティング」について解説しました。しかし、ターゲット顧客を「20代、会社員、男性」のように定義しただけでは、まだぼんやりとした「ひと塊の顧客群」に過ぎず、その人物がどんな価値観を持ち、どんな課題に日々頭を悩ませているのかを具体的に思い描くことは困難です。
そこで本記事では、その曖昧な顧客像を「まるで実在するかのような生身の人間」として描き出し、事業の成功確率を飛躍的に高めるための強力な手法である「ペルソナ作成」に焦点を当てます。
結論から言うと、事業開発の成功は顧客の課題をどれだけ深く、具体的に理解できるかにかかっています。そして、ペルソナ作成は、その顧客理解を飛躍的に深めるための最も効果的なツールなのです。
本記事は、数々の事業開発プロジェクトを支援してきたプロの研修講師の解説と、現場のリアルな質疑応答に基づいています。この記事を読み終える頃には、あなたは以下の状態になっていることをお約束します。
- 事業開発の全体像の中で、ペルソナ作成がどこに位置するのかが明確にわかる
- 明日から使える具体的なペルソナの作り方と、すぐに使えるフォーマットが手に入る
- 現場で陥りがちな失敗を避け、効果的なペルソナを作成するためのコツがわかる
それでは、顧客理解を深掘りし、市場で勝つための実践ガイドを始めましょう。
復習:新規事業開発の全体像と「ペルソナ作成」の位置付け
まず、新規事業開発の全体像を振り返り、その中で「ペルソナ作成」がどのような役割を果たすのか確認します。
新規事業開発は、闇雲に進めるのではなく、以下の5つのステップで仮説の精度を着実に高めていくのが成功への王道です。

- アイデア検証 (Idea Verification):ビジネスアイデアの仮説を立て、素早く可視化するフェーズ。
- Customer–Problem Fit (CPF:課題の質を上げる):立てた仮説が、本当に顧客の課題とフィットしているかを確認し、課題の質を高めるフェーズ。
- Problem–Solution Fit (PSF:解決策の検証):質の高い課題を特定し、それを解決するソリューションを検証するフェーズ。
- Product–Market Fit (PMF:人が欲しがるものを作る):特定の顧客に受け入れられた解決策が、市場全体に受け入れられるかを検証するフェーズ。
- Scale (スケールさせるための変革):事業を本格的に拡大させるフェーズ。
この中で、「ペルソナ作成」は、特にステップ2のCustomer-Problem Fit(CPF)の初期段階で非常に重要な位置を占めます。CPFは、以下の流れで進みます。

- 顧客は誰か
- 顧客セグメンテーションとターゲティング
- ペルソナの作成
- エンパシーマップでのペルソナの深掘り
- 顧客体験の可視化と課題仮説の構築
- 課題仮説検証
【講師の視点】 前回の記事で解説したセグメンテーションとターゲティングは、市場の中から同質のニーズを持つ集団を切り出し、狙うべき対象を決定するプロセスでした。しかし、「ターゲット」はそのままでは「ひと塊の顧客群」に過ぎず、ターゲット像はまだ曖昧なままです。そこで、ペルソナを作成することで、その顧客ターゲット像をより詳細に、定性的に描き、明確化していくのです。

ペルソナとは何か?「ターゲット」との決定的な違い
ペルソナとは、提供する商品・サービスにとって最も重要で象徴的な顧客モデルを、「架空の具体的な人物」として定義した顧客プロファイルのことです。
「ターゲット」が「20代、都内在住の女性」のような大まかな顧客群(=属性の集合体)であるのに対し、ペルソナは「田中 美咲さん、27歳、文京区在住の独身OL、趣味はヨガで健康志向」のように、具体的な名前や顔、ライフスタイルを持つ、まるで実在するかのような生身の人間を描き出します。

なぜ「具体的な一人」を描くことが重要なのか?
なぜ、これほどまでに具体的な人物像が重要なのでしょうか。その理由は、「身元のわかる(顔のある)犠牲者効果」という心理現象に集約されています。
身元のわかる(顔のある)犠牲者効果とは? 人間は、大勢の苦しみや単なる統計データよりも、特定が可能な1人の苦しみの方に強く心を動かされるという心理現象です。
こんな問いが投げかけられたらどうでしょうか。
- A: 「難病で苦しむ2万人の子どもたち」のために寄付してほしい
- B: 「自身の子供と同じ幼稚園に通う、心臓病で海外渡航移植が必要な2歳の『りく君』」のために寄付してほしい
多くの人が、統計的な数字であるAよりも、顔の見えるBの『りく君』に心を動かされ、寄付したいと感じるのではないでしょうか。
これはビジネスにおいても同様です。「1,000人の定量調査の結果」よりも、「たった1人の顧客が語った切実な悩み」にリアリティを感じることはよくあります。単なる統計データや数字の羅列は人々の感情に強く訴えることはありませんが、顔の見える特定の人物を襲った出来事となれば、人々は感情移入せずにはいられなくなるのです。
ペルソナは、まさにこの「顔のある顧客」を作り出すことで、開発者やマーケターが顧客の感情や課題に深く共感し、自分ごととして捉えることを可能にするのです。
ペルソナを活用する4つの絶大なメリット
詳細なペルソナを設定し、チーム内で共有することは、事業開発に以下の4つの大きなメリットをもたらします。
- 顧客理解が促進される
専門家以外の人でも顧客像が分かりやすくなり、常に顧客を意識した企画・開発・営業活動が行えるようになります。 - 部門間の円滑なコラボレーションを可能にする
営業、マーケティング、商品企画、開発など、部門間で共通の顧客像(共通言語)を持つことで、円滑なコラボレーションが実現します。これにより、顧客に伝えるメッセージや商品開発の方向性に一貫性が生まれます。 - 意思決定をサポートする
「万人を満足させる」という曖昧な目標から、「このペルソナを満足させる」という具体的な目標に変わるため、議論が具体的になり、意思決定が迅速になります。 - 一貫したユーザー評価を可能とする
チーム内で共通の顧客像をもとに評価ができるため、商品やサービス、マーケティング施策に対する評価に一貫性が生まれます。
ペルソナの作り方とペルソナ像の深掘りは、まさに事業を「顧客起点」で考えるための強力な武器となるのです。
【実践】ペルソナの作り方:顧客を具体化する8つの必須項目
では、具体的にどのようにペルソナを作成すればよいのでしょうか。顧客ターゲット像の情報を定性的に具体化していくために、以下の項目を設定していきます。
- プロフィール(基本属性)
ペルソナの基本的な情報を設定します。- 日常生活:性別、年齢、居住地、家族構成、年収、交友関係など。
- 仕事:所属企業、部門、職種、予算、決裁権、社内での影響力など。
- 価値観・感情・思考特性
ペルソナが何を大切にし、どのように考え、感じるのかを深掘りします。- 日常生活:人生で大切にしている価値観、楽しい・嬉しいと感じる時、物事に対する考え方など。
- 仕事:仕事で大切にしている価値観、やりがい・達成感を感じる事、物事に対する考え方など。
- 情報収集のスタイル
普段どのようなメディアから情報を得ているか、最近気になっていることは何かを記述します。 - 実現/達成したいこと(Will)
ペルソナが「やりたい」と強く感じていること、現在の目的や目標を明確にします。- 日常生活:生活上の実現/達成したい事など。
- 仕事:業務上で実現/達成したいと考えている事、業務上の目的や目標など。
- やらなければならないこと(Must)
Willとは異なり、日々発生している、あるいは避けられないタスクやミッションを記載します。- 日常生活:生活上のタスクなど。
- 仕事:業務上のミッションやタスクなど。
- Will/Mustの活動実態
WillやMustを達成するために、ペルソナが過去にやったこと、現在やっていること、今後やりたいと思っていることを記述します。 - 問題・課題
WillやMustと現状の間に発生しているギャップや、ペルソナが抱える問題点を言語化します。特に、課題感が大きく優先度の高いものは何かを特定します。 - 投資意思決定のメカニズム
ペルソナが課題に対してどのような考え方で、何がトリガーとなって投資(時間やお金を使う)の意思決定をするのかを言語化します。
【実践で役立つ工夫】B2Bでは「企業ペルソナ」も設定しよう B2Bの場合、担当者個人のペルソナだけでなく、その人が所属する企業としてのペルソナも設定すると、より深い理解が得られます。企業ペルソナには、所在地、業種、従業員数、資本金、業界ポジション、企業文化、ITリテラシーなどの属性情報を設定しましょう。
【フォーマット付】ペルソナ作成シートと具体的な記入例
ここでは、飲食店の店長を例に、具体的なペルソナ作成のイメージを掴んでいきましょう。このフォーマットを参考に、ぜひご自身の事業でも作成してみてください。
ペルソナ作成フォーマット
ペルソナイメージ画像

項目 | 詳細 |
---|---|
名前 | 加藤 武雄(かとう たけお) |
プロフィール | 年齢: 35歳 性別: 男性 居住地: 千葉県船橋市 職業: 海鮮居酒屋の経営者(個人店、父親の後を継ぐ) 家族構成: 独身、一人暮らし 趣味: サーフィン、スケートボード |
ライフスタイル | ・平日は夜中まで働き、朝は遅めに起きる生活 ・週末のサーフィンが一番のリラックスタイム ・忙しくても友人との時間や自分の時間をしっかり確保したい |
価値観・思考特性 | ・お客さんと距離が近く、会話しながらサービスを提供するスタイルが好き ・ITリテラシーは高くないが、新しいものを試すのは好き ・苦手なことは人にうまく頼ることができ、助けてもらえるので困らないタイプ |
情報収集のスタイル | <<プライベートな情報収集>> ・家ではテレビをよく見る(勤務後なので深夜のテレビを見ることが多い) ・職場では休み時間にスマホでインターネットサーフィンをする ・スキマ時間でYoutubeやTikTokなどの動画を見る <<仕事上の情報収集>> ・仕事に関する情報は仕入先からもらうことが多い ・昔からの同業の仲間とのつながりから情報を得る ・クーポンメディアなどの営業から最近のトレンド情報を得ることも多い |
Will(実現したいこと) | ・新しいメニューの開発をしたい ・お客さんとの会話をもっと楽しみたい ・友人とのサーフィンに行きたい、できるだけ長く寝ていたい |
Must(やらなければならないこと) | ・仕込み、片付け、受発注、シフト管理、給与計算、レジ締めなど、お店の管理業務すべてを一人でこなさなければならない |
Will/Mustの活動実態 | ・お客さんと会話するスタイルの営業はできているが、忙しくて新しいメニュー開発に割く時間がとれていない ・店を閉めたあとにやらなければいけない業務が多く、やらないとお店を回せないので自分でやらざるを得ず、帰宅が遅くなっている |
問題・課題(Will/Mustと現実とのギャップ) | ・店が繁盛しているため、毎日とにかく時間がない ・新メニュー開発など、本来考えたいこと(Will)に時間を割けていない ・日々のやらなければならないこと(Must)をこなすだけで精一杯になっている |
投資意思決定メカニズム | ・お店は繁盛しており、利益は出ている ・人がやる作業(特にアルバイト)を効率化でき、時給分より安くなるなら新しい仕組みも積極的に導入する ・ただし、導入に時間がかかったり、作業に手間がかかるようでは話も聞いてくれない |
このようにペルソナを具体的に描くことで、どのようなサービスを、どのようなメッセージで届け、どの点を訴求すれば彼の心に響くのかが明確になってきます。
ペルソナをさらに深掘りする「エンパシーマップ」活用法
ペルソナの人物像ができた後、その心理状態や行動をさらに深く理解するために「エンパシー(共感)マップ」を活用します。エンパシーマップは、ペルソナ視点で感情や行動を整理することで、顧客のインサイト(本人も気づいていない本音や無意識の欲求)を浮き彫りにするフレームワークです。
エンパシーマップの6つの要素
エンパシーマップは、以下の6つの要素から構成されます。

- Think & Feel(何を考え、感じているか): ペルソナが口には出さないが、本当に望んでいること、心配していること。
- Hear(何を聞いているか): 周囲の友人、上司、インフルエンサーなどから何を聞いているか。
- See(何を見ているか): 生活環境や市場で何を見ているか。どんなメディアに触れているか。
- Say & Do(何を言い、行動しているか): 周囲に対してどう振る舞い、どんな行動をとっているか。
- Pain(どんな痛みを感じているか): 恐れ、障害、フラストレーション。
- Gain(何を得たいのか): 欲しいもの、必要なもの、成功の指標。
これらの要素を書き出すことで、ペルソナの内面がはっきりとした輪郭を帯びて見えてきます。
【講師の視点】Gainは「成功の基準」まで具体化する これまでの研修の中でのQ&Aで非常に重要な指摘がありました。エンパシーマップの「Gain(得たいもの)」を記述する際、「早く見積もりが欲しい」のような曖昧な表現で終わらせてはいけません。
例えば、「見積もりを外観がわかるレベル(±20%でOK)で翌日中に欲しい、今日中にもらえるならもっと嬉しい」のように、具体的な基準まで落とし込むことが重要です。ここまで具体化することで、開発チームや営業チームの認識のズレがなくなり、プロジェクトの設計がブレなくなるのです。
具体的な記入例
先ほど作成した飲食店店長、加藤武雄をベースにした具体的なエンパシーマップの記入例

【成功事例に学ぶ】ペルソナマーケティング
ペルソナマーケティングが実際にどのように事業の成功に貢献しているのか、2つの事例を見ていきましょう。
事例1:ASKULが切り拓いた「法人×小規模事業所」の真空市場
アスクルは、文具市場において、法人向けかつ30名未満の事業所という「巨大な真空市場」に照準を合わせました。このセグメントでは、従来の外商サービスレベルは低く、事務員が自ら文具店に買いに行くという非効率な状況が放置されていました。
例えばアスクルのペルソナを考えてみると、この市場で働く「田中 美咲(27歳、卸売業の一般事務、既婚・子ども1人)」が設定できます。
- 彼女の課題: 「いつも文房具が切れると同僚から急ぎで依頼されるが、発注してもすぐには届かない」。作業を止めて文具店に買いに行くのが面倒。
- 彼女の投資意思決定メカニズム: 「値段について細かく言われないので、安いところを探すよりも、むしろすぐに届いたり、自分の手間が削減されることの方が重要(依頼した同僚に遅いと文句を言われる方が嫌)」。

仮にこのペルソナの課題とニーズがチームの共通理解になっていれば、「明日来る(翌日配送)」という迅速性と利便性を核とした価値提供を考えることができます。
事例2:カルビー「Jagabee」:20〜30代独身女性のインサイトを捉える
カルビーの「Jagabee」は、それまでお菓子業界では珍しかった、明確なペルソナ設定によって大ヒットした商品です。開発当時、既存のスナック菓子では「20~30代の独身女性」がダイエットなどを理由に離脱しているという課題がありました。
そこでJagabeeの開発では、年齢や性別だけでなく、顧客のライフスタイルや価値観まで決めたペルソナマーケティングを展開しました。
- ペルソナ: 「27歳、東京都文京区在住の独身OL。おしゃれで情報感度が高く、自然派でシンプルな生活を好み、健康にも気を配る。よく読む雑誌は『Oggi』」。
このペルソナを意識した結果、商品(自然派・塩分控えめ)、パッケージ(都会的なデザイン)、CM(ファッションモデルの起用)のすべてが一貫したメッセージを持つことになりました。開発から販促までの全過程で「彼女たちの視点で評価してくれ」と繰り返すことで、一貫性のあるマーケティングを実現し、成功へと繋がったのです。
参考:自己流「ペルソナ」で大ヒット商品生み出す 「ジャガビー」の最重要顧客は文京区在住の27歳独身女性

ペルソナ作成で陥りがちな失敗例と成功への7つのコツ
ペルソナ作成を効果的に行うためには、いくつか重要なコツと注意すべき点があります。ここではこれまでの研修の議論で明らかになった、現場で陥りがちな失敗と、それを乗り越えるためのコツを7つ紹介します。
【よくある失敗】自分たちの都合の良いペルソナを作ってしまう
研修でのQ&Aより 参加者: 「自分たちが持っていきたい方向性のペルソナを作ってしまう、ということがよくあります…」 講師: 「ダメです。 その原因は、多くの場合、先に『こういう製品を作りたい(ソリューション仮説)』があり、それに合わせて顧客や課題の仮説を作ってしまうからです。ペルソナ作成の目的はあくまで『顧客の解像度を上げること』。『こうだったらいいな』という願望で作ると、現実から乖離し、事業は失敗へと向かいます。」
成功への7つのコツ
- 「実在する顧客」をモデルにする
理想のお客さんではなく、実際に存在するお客さんをモデルにしましょう。リアリティのある顧客像を土台に考える方が、事業の精度が格段に上がります。経験が少ない業界であれば、まず顧客インタビューから始めるのが鉄則です。 - チームで作成する
一人で作成すると主観に偏りがちです。少なくとも3名以上の多様な視点を持つグループで意見を出し合いながら作成することで、一人では気づけなかったインサイトが生まれます。 - 「擦り合わせの場」と捉える
人は同じものでも見方によって違う印象を持ちます。製造部門と営業部門で顧客像が異なるのはよくあることです。ペルソナ作成は、この認識のズレを減らし、チームの目線を合わせるための「擦り合わせの場」として非常に有効です。 - 1ペルソナ、1エンパシーマップ
異なるペルソナが複数いる場合、それぞれ感情や行動も異なります。エンパシーマップはペルソナごとに作成する必要があります。 - ゴールは「事業の成長」
エンパシーマップは、サービスの成長につなげることをゴールとして作成します。常に「事業とどうつながるか」を念頭に置きましょう。 - ペルソナは常にアップデートする
ペルソナは、一度作成したら終わりではありません。実際の顧客からフィードバックを得るたびに修正し、より臨場感あるものに育てていくことが重要です。
まとめ:明日から始める、顧客解像度向上のためのネクストステップ
本記事では、新規事業開発を成功に導くための「ペルソナ作成」について、その重要性、具体的な作成手順、そして効果的な作り方とコツを網羅的に解説しました。
- ペルソナは、抽象的な「ターゲット」を、共感できる「具体的な生身の人間」へと具現化する強力なツールです。
- ペルソナの作り方は、基本属性から価値観、Will/Must、課題、投資意思決定メカニズムまで、多角的に定性情報を深掘りすることで、その解像度を高めます。
- 成功のコツは、「実在する顧客」をモデルにし、「ソリューション先行」の思考に陥らず、常に顧客の視点に立ち返ることです。
この記事を読み終えたあなたの次なる一歩は、壮大な事業計画書を書くことではありません。まずはチームメンバーと共に、「私たちの顧客は誰で、その最大の課題は何か?」を言語化してみることです。そして、本記事で紹介したペルソナ作成フォーマットに沿って、最初のペルソナを描き出してみてください。
完璧な答えは必要ありません。まずはたたき台となる仮説を作り、それを顧客にぶつける検証の旅に出ることこそが、成功への最短ルートとなるでしょう。
よくある質問(FAQ)
- ペルソナは実在の人物をモデルにすべきですか? それとも理想像でもいいですか?
-
実在するお客さんをモデルにすることを強く推奨します。最終的にはその人たちにお金を払ってもらうため、「こうだったらいいな」という理想像で考えると現実から乖離し、事業の精度が下がります。経験の少ない業界であれば、まず顧客インタビューを行い、リアリティのある顧客像を掴むことから始めましょう。
- 自分たちの都合の良いペルソナを作ってしまいがちです。どうすれば防げますか?
-
その原因は、多くの場合「作りたい製品(ソリューション仮説)」が先にあり、それに合わせて顧客や課題を考えてしまうことにあります。一度立ち止まり、ゼロベースで「顧客は誰か」「その人の課題は何か」から考え直す勇気が重要です。また、複数人で作成し、異なる視点を取り入れることで、一方的な思い込みを防ぐことができます。
- エンパシーマップの「Gain(得たいもの)」を具体的に書くコツは?
-
ペルソナが「成功」をどんな基準で捉えているかまで踏み込んで記述することです。例えば「早く見積もりが欲しい」ではなく、「外形見積もり(精度±20%)でいいから、依頼した翌日中には欲しい」のように、速度や品質の具体的な基準まで言語化します。これにより、チーム内での認識のズレを防ぎ、開発要件も明確になります。
- B2Bのペルソナ作成で特に気をつけることはありますか?
-
B2Bでは、サービスを実際に利用するユーザーだけでなく、購買の意思決定者や、その決定に影響を与える影響者など、複数の登場人物が関わります。そのため、担当者個人のペルソナに加えて、その人が所属する「企業ペルソナ」(業種、従業員数、業界ポジション、企業文化など)も設定すると、より解像度の高い分析が可能になります。
- ペルソナ作成は一人で行っても良いですか?
-
可能ですが、推奨されません。特にエンパシーマップなど感情を扱う作業は、一人で行うと主観に偏りがちです。できれば3名以上のグループで、異なる視点から意見を出し合いながら作成することで、より客観的で深いインサイトが得られます。
- ペルソナは何人くらい作るのが適切ですか?
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一概に決まりはありませんが、まずは最も重要で象徴的な顧客モデルを表す1人の主要なペルソナから作成を始めるのが一般的です。事業が複雑で、明らかに異なるニーズを持つ複数の重要な顧客セグメントが存在する場合は、それぞれに対してペルソナを作成することもありますが、最初は絞り込むことが重要です。多すぎると焦点がぼやけてしまうため、多くても2〜3人程度に留めるのが良いでしょう。
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